2011年7月8日金曜日

『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』刊行記念著者来日イベント。


先日さらっと書いた,「『スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション』刊行記念著者来日イベント」は,いわゆるブロガーイベントであったので,あれだけじゃいかんだろうってことで,あらためてここにレポートする。

 当日のイベントへの参加の様子は,当日のTwitterのまとめでもだいたいわかる。

 第1部は,著者の講演,そのまま第2部の質疑応答,終わって第3部,立食パーティーになって22時頃に終了した。
 会の感想を,読後の本の感想を交えて以下に記そう。

■この本は,『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則』に続く第2弾,となるらしい。
 著者も,日本での出版社も同じ。

 前作のヒットを受けて,今回も是非,ということで予算をつけてこういったイベントをしたということらしい。
 どっちのことかわからないが,パーティー会場でのどなかたのスピーチだったか,20万部とか,ちらっと耳にしたので,要するに相当に売れたってことだ。

■自らが出版に携わっていながら,本はあまり読まない。
 もちろん仕事上の必要があってその都度に本は読んでいるが,一文字一文字しっかり読む,ということはまずない。
 そんなことしてたら,仕事ではなくて,道楽になってしまう。って感覚。

 今回は,税込1890円のこの本を持参なら無料,なければ2000円の参加費だった。

 できれば1日でも早く手にいれて,ざっと目を通してから参加したかったのだが,当日の予定が前日まで不定だったため,この会自体に参加できるのかわからないままで,その機会を逸した。

 講演にも遅刻して講演を聞きながらざざっとひらいて要点をチェック。
 この会のあとに全体を俯瞰した。

■あー,遅刻したのは,それでも,と池袋のビックカメラパソコン館に寄ってこの本を購入しようとしたからだ。
 店員に尋ねて調べてもらったものの,入荷がないとのことで断念した。

 それほど売れた本の第2弾で,ジョブズについて書かれた本であっても,コンピュータ関連の専門書店に委託配本されていないとは,配本を司っている書籍取次の怠慢はもう救いようがないところまで来てると感じる。
 考えずに商品を動かすだけならば,是非とも宅配業者などに参入してもらって,低コスト化を進めて欲しいと零細出版社として強く思う。書店への適正配本もそういった会社が本気になればさほど労せずにできるんじゃないかな。

 話が逸れた。

■講演について。
 講演は早々に終わって,質疑応答に入ったのだが,その流れ,そのムードが,昔を思い起こさせた。

 FMACBG,FMACUSのみんなはいまどうしているのだろうか,彼らのうち何人かはここにも来ているんだろうか。
 Fなんたら,って何?ってのは,これフォーラム,の略で,インターネット普及のはるか以前,パソコン通信と呼ばれるものがあったころの話だ。
 僕らはそこでノウハウを交換し,Macを使い,深め合い,広め合った。

 感じたのはそのデジャヴ,のようなものだ。

 日本全国,Macに関して,誰がどんな本を書いて,編集して,訳して,どんなイベントを開いて,参加して,誰もが友達か友達の友達,あるいは,仲間であった時代。

 こういう講演会だって,出版記念パーティだってもちろんあった。

 Appleが日本法人を作り直販を主とし,大手出版社(日経BP社もそのうちのひとつだ)が関連書籍へと参入し,インターネットが普及し,その他にも様々な要素があって,解体されてしまったコミュニティ。

 日経BP社の担当者が今回のイベントを「これもまたイノベーション」と言っていたが,それは違う。
 これは「ルネッサンス(復古,復興)」だ。
 時代に合わせて形がかわってはいるものの,20年前にあったものと同じもの,あるいはそれに近づく過程のものだ。

■この本の著者は,ジョブズの友人なんだろうか。違うだろう。
 友達でもないだろうし,ビジネスパートナーであったこともなさそうだ。
 それなのに,なぜ,自分がさもジョブズのようなくちぶりで話すのか,それが不思議だ。

 あなたはなぜ,ジーンズにTシャツではなくワイシャツにネクタイなのか?と質問されつことがあり,それは自分がジョブズではないからだ,と答えた,というエピソードは,要するにソレでは無いのか。

 遠くなりすぎて近くしてしまう。

 僕らの時代でもジョブズは遠いスターであったが,失敗もするし普通の人間だった。

 Appleを追い出されたのだって,その頃の僕らにとってはリアルに今だった。
 ジョブズのいないAppleだって,すべてがダメなわけじゃなかった。
 ジョブズの留守にアメリオが互換機をはじめたって,僕らはそれでまた盛り上がって楽しんだ。
 OS9の後に来るものを,ジョブズが戻ってきてNEXT STEPに入れ替えてしまった。最初のOSXは遅いしひどいものだった。

 結果オーライ,なんだかいまはもう神になってしまっているんじゃないだろうか。

 MacBookのコードはどのアイデアか知ってるかい?
 あれは日本の炊飯器からなんだよ。
 だからどーした。
 日本の炊飯器には巻き取り収納式のコードのもあって,それも定評がある。
 そもそろどちらだって,ACアダプタなんて使ってないよ。
 どんなにバッテリー寿命を伸ばしたって結局は持ち歩くんだから,内蔵してしまえよ。ジャパニーズライスクッカーみたいにさ。

■前作の「驚異のプレゼンテーション」をビジネス書として読んでいる人が多かったとのこと。
 それで今作があるということなんだろう。

 ジョブズも孫正義も柳井正もカリスマ的な経営者の一人だ。
 堀江でも藤田でも江副でもなんでもいけど,そういう種類の人達はいるよ。

 この本の内容を誰が言ったことにしたら,読者のモチベーションにつながるだろうか。

 自分はジョブズをはじめ,彼らのようなレベルの経営者になるつもりはない。
 また,自分が会社員ならなおさらだ。

 歴史上の人物の一人として,織田信長でも石田三成でも豊臣秀吉でもいいや,もー,誰でもいいや。
 彼らの生き方を参考にして,自分のトコまで落としこんできて,本来とはぜんぜんちがうけれど,いいように解釈して,自分のモチベーションにつなげて,がんばろう!ってのだよ。

 うん,子供なら,ウルトラマンとか,仮面ライダーに憧れて,がんばろうってのだっていいよ。

 Appleが,ジョブズが,いま,いい成績を出してるから,こういう本が出たってことだよね。

■Appleの歴史を,ジョブズの歴史を,知らない人は,この本から始めてみても良いと思う。
 それが,いまの仕事や生活へのモチベーションにつながったら,なお,良いと思う。

 というのは,この本を手にしたってことは,少なくともAppleに興味があって,ジョブズに興味があるってことだから。
 彼らや彼の成功にあやかって,この本に書いてあることで,自分なりに消化できる範囲のことを,生活のスパイスとして試みるのは良いと思う。

 ジョブズは,オリンピックのスポーツ選手のように,それについてのすべてをやりつくしてここまで来たんだと思う。
 筋肉を傷め,骨を傷め,関節を傷め,それでもあきらめずに,続けてきたんだと思う。
 彼はすべて,経験して,知ってる。参考にならないはずはない。

 ただ,この本の帯書きにあるように,「ジョブズと同じ仕事やキャリア,人生が送れる」なんて思わないほうがいい。

 そういう人生が,つまりリスクに囲まれた暮らしが幸せだと思える人は,ホント,限られてるんだから。
 そして,ジョブズのように,成功できるのは,更に,限られてるんだから。
 これを売り文句にする意味が自分にはよーわからない。

 というか,リスクの記載が殆ど無い投資への指南書みたいなもんだよね。
 そういう無鉄砲さもまー,必要だけれどさ。

■最後に。

 なんだか書評になってなくて申し訳ないし,文句たらたら書いてるみたいな文章で申し訳ない。

 こういうことを考える機会を与えてくれた,この本,著者,訳者,出版社,関係のもろもろのみなさんに感謝。

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